10種類のノートからグラフィーロ(Graphilo)を選んだ理由。元設計士が選ぶ、万年筆の力を100%引き出す「紙」の条件とは?

目次

美しい万年筆を、手に入れた夜に

念願の万年筆を、ついに、手に入れた。

その夜、高揚した気持ちのまま、
家にあった一冊のノートを開く。


ペン先を出し、ゆっくりと、
自分の名前を、書いてみる。

——あれ?

書けないことは、ない。

線が、ひどく滲むわけでもない。

裏抜けして、次のページが
汚れているわけでもない。

ただ——

思っていたほどの、感動が、なかった

頭の中で描いていた、
あの「美しい万年筆の筆跡」が、
紙の上には、生まれてこない。

文字の輪郭が、
ほんの少しだけ、ぼんやりとしている。

決定的に悪いわけではない。
でも、何かが、少し、違う。

——そんな、言葉にしにくい違和感が、
最初の夜に、残った。


その違和感の正体を、探したくて、
僕は、いろいろなノートを、試した。

ある時は、
ツルツルした、少し光沢感のある紙」のノートを、
買ってみた。

KOKUYOのPERPANEP(TSURUTSURU)という、
滑らかさを売りにしたノートだ。

試しに、エラボーで書いてみた瞬間——
今度は、別の問題に気づいた。

ペン先が紙の上を滑りすぎてしまう感じがした。

僕が持っているエラボーのペン先は
「SF」(細字)だ。

だからか、
少しツルツルした感じだな、程度。

しかし。

ペン先が「M」(中字)のキャップレスで書くと、
ツルツル滑る感じが増す。

これも慣れなのかもしれないが、
初心者さんには難しい気がする。

そして

ある時は、
和紙のような、繊維の温かみのある紙を試した。

ある時は、
上質な手帳に使われる、薄手の高密度な紙を試した。

ある時は、
海外の有名ノートブランドの、定番の一冊を試した。

それぞれに、良いところはあった。
しかし、どれも、「これだ」とは、ならなかった。


10種類くらいのノートを、試した末に——
僕が、ようやくたどり着いた、最後の一冊。

神戸派商店の 「グラフィーロ(Graphilo)」 ——

万年筆で、日本語を、美しく書くための、
僕にとっての、もっとも正解に近い答えだった。


万年筆における「紙」とは、ペンの能力を引き出す「相方」である

僕は、前職で、家具の設計に携わっていた。

その家具に使う木材もその材質によって用途がある。

たとえば、ナラ材は、硬く、重く、
年月とともに深い色合いに育っていく。

椅子の脚や、テーブルの天板のように、
強度と存在感が求められる場所に、向いている。

一方、スギ材や檜は、
柔らかく、軽く、香りも豊かだ。

内装の壁材や、
キャビネットの引き出しの材料に向いている。

これを、逆にしてしまったら、どうなるか。

スギや檜で椅子の脚を作れば、
強度がないためすぐに壊れてしまう。

 引き出しにナラ材を使うと、
重くて引き出しにくい。

素材は、悪いわけではない。
ただ、用途との「相性」が、
合っていなかっただけだ。


万年筆と紙の関係も、
これと、よく似た構造をしている。

世の中のノートのほとんどは、
ボールペンや鉛筆で書くことを前提として、
作られている。

それは、ノートの紙が、悪いわけではない。

ただ、万年筆という道具との「相性」を、
もともと、想定していないのだ。

万年筆のインクは、ボールペンに比べて、
はるかに水分量が多く、
サラサラと流動する液体だ。

そのインクが、
ボールペン用の繊維の隙間に置かれると——
繊維の中を、横にじわりと広がり、
文字の輪郭が、わずかにぼやけてしまう。

それが、最初の夜、僕が感じた
「言葉にしにくい違和感」の、正体だった。


つまり——
あなたの万年筆が、悪いのではない。
あなたが買ったノートが、粗悪なのでもない。

ただ、ペンと紙との「相性」が、
噛み合っていなかった。

それだけのことだ。


「滑らかすぎる紙」では、文字は整わない

紙を探していた時期、
僕は、ひとつの仮説を立てていた。

「滑らかに、ストレスなく書ける紙ほど
 良い紙なのではないか?」と。

ペン先が、抵抗なく走る感覚は、
確かに、心地がいい。

だから、ツルツルとした、滑りの良い紙の方が
書きやすいのでは?と。

しかし、いざ、その滑らかな紙で、
漢字を、丁寧に書こうとした時——

僕は、ある事実に、気づくことになる。

滑らかすぎる紙の上では、
「トメ・ハネ・ハライ」を決めるのが
少し難しいのだ。


それなりには、書くことはできる。

しかし、指先が少し力んでしまう感覚を覚えた。

そして、「トメ・ハネ・ハライ」で
いつもより気を遣っているようにも感じた。

不思議だった。


ツルツルとして書き味は、気持ちいいものである。

しかし、余計なところに気を配る気持ち悪さもある。

——そこで、ようやく、僕は理解した。

「トメ」「ハネ」「ハライ」とは、
紙との摩擦を借りて、ペン先を制御する動作なのだ、
と。

だからと言って、摩擦がありすぎても
カリカリ感やザラザラ感があって、書きづらい。

ペン先と紙の間に、ほんのわずかな抵抗があるからこそ——
止めたい場所で、止まれる。

力をためたい場所で、ためられる。

その摩擦が、丸ごと失われてしまえば、
繊細なコントロールなど、できるはずもなかった。

これは、好みの問題なのかもしれない。

しかし、それだけではない。

重要なのは、
ペン先の太さと紙の質の相性もあるということだ。

上記したように、基本的には、
中字や太字のペン先には
少しザラザラした抵抗感が求められる。

また、細字、極細字には、
ツルツルした材質の方がカリカリ感が出にくい。

美しい文字を書く上で、ペン先を制御するには、
中字や太字→比較的ザラザラした素材
細字や極細字→比較的ツルツルした素材が良い。

と言う結論に達した。

しかし、あえてキレイに書かないという選択もある。

それは、ジャーナリングなどの内省の言語化の時だ。

あえてキレイに書かずに、
心の中の言葉をどんどん文字として
顕在する過程においては、
中字のペン先でツルツルした紙に書いた方がいい。

僕はそう感じた。

しかし、僕が美しい文字を書くために手に入れた
エラボー「SF」(細字)には、
グラフィーロが最適だという結論に達した。


美しい文字を書くために必要なのは、
滑らかさではない。

指先の力みを、確かに受け止めてくれる
「適度な摩擦」だ。


究極の受容体——「グラフィーロ」という設計思想

長い試行錯誤の末、僕がたどり着いた答え。
それが、神戸派商店の 「グラフィーロ(Graphilo)」 だ。

このノートを、ひとことで表すなら——

「万年筆のためだけに、設計された紙」

たったそれだけの思想で、作られたノートだ。

神戸派商店のHPには次のように書かれている。

神戸派計画のオリジナルペーパー
〈GRAPHILO|グラフィーロ〉は
ギリシャ語の「書く(graph)」と「愛する(philo)」を
合わせてネーミングされました。

万年筆の書き味にこだわった紙製品を
作りたいという思いから製造された紙です。

この思いは、僕にも明確に伝わった。


世の中には、「万年筆にも使える」紙は、
たくさんある。

 しかし、グラフィーロは、その逆だ。

「万年筆で書くことだけ」を、
念頭に置いて、設計されている。

裏抜けしない、紙の厚みと密度。
滲まない、表面の処理。
ブルーブラックのような、深いインクを、
きれいに発色させる、繊維の素直さ。

 ツルツルでもなく、ザラザラでもない、
絶妙な摩擦感。

——どれも、万年筆を使う人のためだけに、
丁寧に追求された結果だ。

特に、摩擦感が絶妙なのだ。

極細のペン先でも、カリカリ感が少ない。

中字のペン先で、ツルツルと滑りすぎることもない。

それこそが、僕がグラフィーロを
気に入っている理由の一つだ。


当然、鉛筆やボールペンでも綺麗に書ける。

しかし、「他の筆記具でも使えますよ」という、
八方美人な設計ではない。

「万年筆を、最も美しく見せる」という、
ただ一つの目的のために、潔く絞り込まれている。

僕は、そう感じた。

そして、その潔さこそが、
グラフィーロを唯一無二の存在に押し上げている。


▼▼▼加筆・修正エリア▼▼▼

実際に、エラボーで、グラフィーロの上に、文字を書いてみると——

(ここに、店主のリアルな実体験レビューが入ります)

▲▲▲ここまで▲▲▲


「8mm横線」が導く、初心者のための、文字の中心線

グラフィーロには、
いくつかの罫線のバリエーションがある。

無地、横罫、方眼、ドット罫——

どれも、それぞれの目的に応じて、選ぶ意味がある。

しかし、凛筆では、特に
「8mm横線」のグラフィーロ を、強く推奨している。

その理由を、お伝えしたい。


凛筆では、8mm横線のグラフィーロを使う時、
こんな書き方を提案している。

「2行(16mm幅)を、ひと文字の枠として使う」

16mm幅というのは、
普段あまり書くことない大きさだ。

しかし、漢字を書く練習をするには、
ちょうど良い大きさだ。

このくらいの幅に
キレイに収まる大きさで書くことにより、
トメ・ハネ・ハライの繊細な表情を、
紙の上に載せることができる。

ただ、これ以上大きくなると、かえって書きづらい。

16mmという寸法は、
エラボーが生む線の表情を、
しっかりと味わえる、絶妙な大きさだ。


そして、ここに、もう一つ、
決定的な意味がある。

16mm幅を一文字として使うと——
2行のちょうど真ん中に、
罫線が、中心線として通ることになる。

この、文字の真ん中を通る一本の線。

これが、初心者にとって、
何より大切な、ガイドラインになる。


少し、説明したい。

美しい文章とは、
ひとつひとつの文字が美しいだけでは、
生まれない。

文字と文字の、「中心線」が、
一直線に揃っていること。

これが、整った文章を、
整った文章たらしめている、
もっとも基本的な要素だ。

文字の大きさが揃っていても、
中心線がずれていれば——
文章全体が、なんとなく、波打って見える。

逆に、文字の大きさが少しまちまちでも、
中心線さえ揃っていれば——
文章全体は、不思議と、整って見える。

書道や習字の世界では、
これを「行の縦軸を通す」と表現する。

プロの書家は、何も書かれていない紙の上にも、
頭の中で、見えない中心線を通しながら、
文字を配置していく。


しかし、初心者には、これが難しい。

何も書かれていない白い紙に、
見えない中心線を、自分で引きながら書くなど——
ベテランでなければ、瞬時にはできない。

ここで、8mm横線の、罫線そのものが、
中心線として機能する

16mm(2行幅)を一文字として使う。

その2行の境界線は、
ちょうど、文字の中央を、ぴたりと通る。

書く前から、すでに、文字の中心の位置が、
目に見えている。

「次の文字の中心は、この線の上に置けばいい」
——そう、視覚的に、明確に、教えてくれる。

これを毎日続けていると、
いつしか、白紙の紙の上にも、
頭の中で中心線を通せるようになる。

罫線が、初心者を、ベテランへと、
静かに育ててくれる


なぜ「8mm横線」のグラフィーロを推奨するのか

・2行(16mm幅)を1文字の枠として使うことで、
 トメ・ハネ・ハライの表情が
 しっかりと表現できる大きさになる

・2行の境界線が、ちょうど文字の中心を通る
 「ガイドライン」になる

・文字の中心線が揃うことで、
 文章全体が、自然と整って見える

・繰り返すうちに、白紙の上にも、
 頭の中で中心線を通せるようになる

「文字を整える」ことは、「心を鎮める」こと

ここまで、紙の話、摩擦の話、罫線の話を、
お伝えしてきた。

最後に、ひとつだけ、
心の話をして、終わりたい。


凛筆では、エラボーとグラフィーロを、
セットとして、お届けしている。

エラボーが生み出す、線の微かな揺らぎ

グラフィーロが受け止める、適度な摩擦

——この二つが組み合わさった瞬間に、
日本語の文字は、
ようやく、本来の美しさを取り戻す。

ペン先が、紙の上で、ふわりと止まる。

インクが、繊維の中に、深く沈み込む。

線の太さが、わずかに揺らぎながら、
生きた表情を、紙の上に残していく。

——これは、もう、
ただの「文字を書く」という作業ではない。

心を、ゆっくりと、整えていく時間だ。


会社では、
毎日、無数の判断に追われている。

家に帰れば、
家族のための時間に追われている。

自分の心を、静かに鎮める時間など、
どこにも残されていない。

そんな日々の中に、たった15分。

エラボーを手に取り、
グラフィーロを開き、
ペン先を出す。

そして、ゆっくりと、
自分の名前を、一文字、書いてみる。

——その瞬間、心の中で、
何かが、すっと、整い始める。

筆圧を整え、
間隔を整え、
中心線を揃える。

文字を整える、
その動作のひとつひとつが——
気づかぬうちに、心の歪みを、
優しく押し戻してくれている


「文字を整える」とは、
「心を鎮める」ことの、
もっとも静かで、
もっとも確かな手段である。


毎日、すり減って帰ってくるあなたの心が、
ふっと、整う時間。

それを、エラボーとグラフィーロという、
二つの道具が、確かに、用意してくれる。

凛筆では、PILOTエラボーと、
神戸派商店のグラフィーロ(A5・8mm横線)を、
心を込めて、セットでお届けしています。

商品の詳細は、こちらの商品ページから、
ご覧いただけます。


少なくとも、僕は、そう信じている。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

店主のすぎやまです。
僕は、武蔵野美術大学 建築学科卒後、家具メーカーにて家具の商品開発や設計の仕事に従事して来ました。その後、福祉業界に転職します。
家具メーカーでは、「モノ」と向き合い、福祉業界では「ヒト」と向き合って来ました。
僕は、良いデザインは、思想・設計・意匠」が有機的に融合していると感じます。
また、そのことは、ヒトの行動にも同じことが言えるのではないかと考えるようになりました。
特に、行動を継続するためには、なぜそうするのか?という意思(思想)とやり易い仕組み(設計)が必要です。
その結果として、行為そのものに充足感が得られ、所作が美しくなる(意匠)と考えるようになりました。

『凛筆』は、万年筆という「道具」と、習慣化の「仕組み」を使って、あなたの毎日を美しく整える(デザインする)ための場所です。

13,000文字に込めた、僕のこれまでの経歴と「店を始めた本当の理由」をぜひご一読ください。

コメント

コメントする

目次